文化の交差が行われる場所:「そのままでいられる街」で生まれたありのままの交流
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「*** in Residence Kyoto」は、海外からやってくるクリエイターと、京都の生活者が日常を共有して学び合い、新しい価値観や関係を育てていくレジデンスプログラムです。
今回密着したのは、京都府内で不動産会社を経営しながら今回初めてのレジデンスオーナーを務めた水口貴之と、カメルーン出身のクリエイターであるJean David Nkot。
カメルーンと京都。約14,000kmの距離を繋ぐ今回のレジデンス事業においては、形式や肩書きにとらわれない、生身の人間同士の交流が行われました。
舞台は、京都が誇る商いのまち、梅小路。このまちでは、古くからひととひとが深く関わり合い、暮らしが営まれてきました。市場の喧騒、地域のリズム、路地を行き交う視線や気配──そんな土地の息づかいの中で行われた「創造的滞在」は、クリエイターにどのような影響を及ぼしたのでしょうか。
クリエイター、レジデンスオーナーの二者のみではなく、住民や関係者と言った「創造的滞在」の登場人物全員が*(アスタリスク)の主体となるのが本事業の特長です。
Jean DavidのFinal Presentationの後、Youth Coordinatorの新田冬和がキュレーターのSten、レジデンスオーナーの水口 貴之さんと本事業を振り返りながら、滞在の記憶をたどりました。
- 聴き手・記事執筆 ユースコーディネーター
- 聴き手 サポート
本文中には、執筆担当以外の Youth Coordinator たちによるコメント[🌀YCノート🌀]をところどころに挟み込んでいます。ページを進めるたび、別の目線からの気づきや驚きがそっと挟み込まれるような、多層的な読み心地を感じてもらえると嬉しいです。
目次
CreatorResidenceInterview with Curator
— Sten Kadji2025/11/2 天気:☂️☀️
16:00 at つくねとminch京都での出会い
ー これまでの人生と京都・梅小路の文化が交差した1ヶ月つながる、京都とカメルーン
ークラフトマンシップと伝統が息づく暮らし滞在のベストモーメント!
ー 五感で京都と出会った1ヶ月都市ごとの特徴を考える
ー 外からの目線で編み直す「京都観」レジデンスオーナーとの関係性
クリエイター・オーナーが力を合わせて試行錯誤 Interview with residence owner
— Takayuki Minakuchi
「レジデンスオーナーがTakaでよかった」
ー レジデンスオーナーの関係を超えた友情アート×不動産の新たなカタチ ー まずは、試しにレジデンスをやってみることバランスを考える ー 滞在の枠組みをどのようにクリエイトする?滞在と地域がつながる ー 梅小路エリアとクリエイターの密接な関係梅小路をおもしろく!
ー パズルが重なるように生まれた滞在クリエイター・オーナー それぞれの葛藤
ー滞在における取捨選択の難しさ滞在のBest Moment!
ー対話し、理解する 関係性とバックグラウンド滞在サポートのこれから
ー折り合いをつけつつ、関係性を作り続けること
Interview with Curator — Sten Kadji
2025/11/2 天気:☂️☀️ 16:00 at つくねとminch
クリエイターJean David NkotのFinal PresentationとFarewell Partyが終わった翌日にインタビューを行いました。午前中は地元のお火焚き祭に参加したSten Kadji。Jean David Nkotは、前日までの制作とハードワークによりおやすみです。

京都での出会い ー これまでの人生と京都・梅小路の文化が交差した1ヶ月

Youth Coordinator : Towa
京都での滞在はいかがでしたか?
Sten Kadji(以下、Sten)
素晴らしいの一言です。日本は初めてでしたが、文化や地域社会について多くのことを学びました。1ヶ月間は本当に充実した滞在でしたね。
Towa
それはとても良かったです。なぜ京都に来ることを決めたのですか?
Sten
個人的には、私とクリエイターのJean Davidの両方が日本の文化を探求したいと考えていました。プロフェッショナルな面では、Jean Davidはアジアでショーやレジデンシーを行ったことがなく、日本の美術市場について学びたいと思っていましたし、私も日本のクリエイターやギャラリーと繋がりを持ちたいと考えていました。
Towa
では、日本の文化に興味を持ったのはいつ頃からですか?
Sten
私の人生のほとんど、ずっとですね。食べ物から、幼い頃に見ていたたくさんのマンガまで。カメルーン文化やアフリカ文化と日本文化には、たくさんの類似点があると感じていました。
これらは遠く離れた場所でありながら、日常生活や歴史において多くの繋がりがあるんです。日本にも植民地主義の歴史があり、他の国々から影響を受けてきた点もカメルーンと同じです。小さい頃から、日本の文化には強い関心がありました。『キャプテン翼』や『ドラゴンボールZ』など、あらゆるものを夢中で見ていましたね。
Towa
日本の中でも京都はかなり「日本らしさ」を保ち続けているまちですもんね。そのような京都というまちでも特異なカルチャーを持つのがここ、梅小路だと思いますが、梅小路地区で特に気に入った点は何ですか?
Sten
梅小路は非常に強いコミュニティだと感じました。魚市場を訪れるのがとても楽しかったですし、多くの店主が長年ここで商売をしているようでした。いわゆるイメージする京都と異なり、観光客が多すぎず、強いコミュニティ意識があることが本当に素晴らしいと思いました。人々の真摯で、ある意味非常に伝統的な姿勢にも感銘を受けました。
Towa
レジデンスのオーナーである水口さんとはどんな関係でしたか?
Sten
今では友人、とても親しい友人だと言えますね。水口さんは本当に多くの面で助けてくれました。例えば、私たちをこのまちに案内してくれたり、クリエイターが制作できるスペースを提供してくれたり。
彼とはこのプログラムのオーナー・クリエイターという関係を超えて、個人的な友人になりました。彼の家族にも会いましたし。彼がアフリカに行ったことがあるからこそ、私たちのことを多く理解してくれました。本当に良い関係でした。
Towa
水口さんを介してであったり、自然発生的に縁が繋がったりと素敵な出会いをこの地で重ねられた、とお聞きしましたが、京都ではどのようなクリエイターに出会いましたか?
Sten
本当にたくさんのクリエイターに出会いました。京都の素晴らしい点は、伝統的な職人と、より現代的な新しいクリエイターがうまく混ざり合っているところです。3Dプリンターを使う人、画家、彫刻家、陶芸家、そして音を扱うクリエイターにも出会いました。
様々な媒体を使う、多様な彼らの作品は、自然やその土地に根付いた関係性と深く結びついていることも多かったです。
つながる、京都とカメルーン ークラフトマンシップと伝統が息づく暮らし

Towa
京都での滞在経験から、カメルーンに持ち帰りたいものはありますか?
Sten
京都は、私に工芸品や職人、そして素材に焦点を当てる大きなモチベーションを与えてくれました。カメルーンには多くの織物や様々な素材があります。京都で陶磁器や織物、機織りに囲まれて過ごしたことで、カメルーンに戻ってそうした職人たちに本当に焦点を当てたいと強く思うようになりました。
Towa
なるほど。少し話は戻りますが、京都のクリエイターの作品にはその土地に根付いた関係性が表象されていることが多いとおっしゃっていましたね。京都は他の地域と比較してもいわゆる「地縁」が人々の関係性に強く影響していると広く言われています。カメルーンにも、あらゆる分野の人々をコミュニティの一員として結びつけるような雰囲気がありますか?
Sten
はい、カメルーンもまた、誰もが繋がれる文化的な中心地になりつつあります。京都と同じように、私も多くの建築家、都市デザイナー、都市開発者、そして画家や彫刻家といった古典的なクリエイターと仕事をしています。京都のような取り組み、つまり市と様々な独立した主体が協力し合うようシステムをカメルーンでも立ち上げたいと思っています。カメルーンは京都ほどリソースが豊富ではありませんが、将来的に実現できたらと願っています。
Towa
そうなんですね。遠く離れたこの2地域がコミュニティの密接さという面で共通するというのは、とっても面白い。
日本とカメルーンの文化的な類似点と相違点について教えていただけますか?
Sten
実はかなり多くの類似点があります。昨日は、例えばアニミズムや祖先への敬意、そして祖先が常に私たちと共にいるという考え方。これは私の文化であるバミレケの人々にとって非常に重要なことです。自然や無生物に魂や命が宿っているという考えもカメルーンにはあります。
また、私たちは非常に集団主義的です。個人よりもコミュニティ、グループを重視します。もう一つの共通点は、カメルーンにも多くの儀式、慣習、舞踊があること。そして二元性の考え方、つまり生があれば死があり、男性と女性のように、全てが調和してバランスをもたらすという考え方です。
これは京都でも多く観察されましたね。西洋的な考え方では、何かを「良い」または「悪い」と判断しがちですが、いわゆる日本の神道やカメルーンにある側面に戻ると、全てが不完全ながらも均衡とバランスの中に存在していることが理解できます。
滞在中には座禅体験もしましたし、お坊さんと話す機会もありました。彼は仏教について多く語り、そこにも多くの共通する見解がありました。カメルーンでもキリスト教と私たちの伝統的な宗教が共存していますし、日本では人々が寺院と神社に行くことで、この考え方が共存しているように感じました。
さらに、カメルーンも工芸品に非常に重点を置いています。木材や泥、粘土など、手に入る素材で仕事をする職人がいます。職人技もカメルーンと日本で非常に似ていると観察しました。


Towa
物事を二元的に考えない。うちと外の線引きを明確にしない。そんな前提があるからこそ、コミュニティが豊かなものになっているのかもしれません。
Jean Davidの作品には、京都のどのような側面が取り入れられていますか?
Sten
実は彼がここに着いたとき、何を制作するか決めていなかったんです。滞在して1週間後に制作を始めました。
京都のどのような側面が彼の作品にあるかと言うと、まず彼が手に入れたコーヒー豆の袋は、地元のコーヒーショップ「滋賀コーヒー」からのものでした。彼は、京都のコーヒー文化に着目しました。京都には多くのコーヒーショップがあり、その数は増え続けています。
彼は、綿、カカオ、様々な鉱物といった生の素材を扱うという自身のスタイルと、このコーヒーという新しい現象を組み合わせました。コーヒーは彼が最近取り入れ始めた素材でもあります。彼は京都、そして世界中で拡大するコーヒー消費の現象を用いて、故郷のコーヒー農家の顔を描写することで、自身の現実を表現しました。地元の素材を使い、ここで作品を制作する。彼はまた、多くのパッチワークや織り合わせも行い、職人技の遺産を尊重しました。コーヒー豆の袋とコーヒーをテーマに、カメルーンと京都という二つの世界を結びつけたのです。
彼はまた、人々の生活や交流の仕方にも深く注意を払っていました。個人的にも、アフリカのコミュニティがいかに寛容であるか、人々が私たちにドアを開け、家で食事を共にする機会が多かったことに感銘を受けていました。これはカメルーンではよくあることですが、西洋では少し少ないかもしれません。ですから、彼は人々、そしてもちろん京都で消費されるコーヒーという製品にそのものにも非常に影響を受けていましたね。
Towa
ここ梅小路の人々から影響を受けたとのことですが、滞在を経てJean Davidさんの作品や制作に変化は生まれましたか?
Sten
昨日のプレゼンテーションの後、彼にその質問がありました。彼はこのプログラムから大きな影響を受けるだろうと話していました。来年、ジュネーブで彼の個展があるので、そこで彼がどんな作品を制作するのか見るのが楽しみです。彼は間違いなく影響を受けるでしょう。例えば、私たちは金継ぎのワークショップにも参加しました。このアイデアは彼が長年研究していたものでしたが、実際に手で作業し、プロの職人が手で作業するのを見たことは、彼の作品にも個人的なレベルでも大きな影響を与えました。彼の今後の作品に注目していてください。京都は将来的に彼の作品に影響を与えるでしょう。
Towa
この地域の人々はオープンマインドだと感じましたか?
Sten
はい、間違いなく。私たちが会った全ての人々がとてもオープンでした。レジデンス事業という性質上、通常、家を貸す人々は非常にオープンなことが多いというのもありますが、それ以上にそうでした。市役所の方々とも交流しましたが、誰もが素晴らしかったです。私たちはカメルーン出身の人々が少ない状況で来たので、皆とても好奇心旺盛で、私たちにとっては非常に良いことでした。自分たちの文化をここで共有するのはとても楽しく、喜ばしいものだった。
Towa
京都は日本の他の地域と比べても、肩書なしでコミュニティに入り込める感覚があるんです。私自身、この春東京から越してきて実感したことなのですが。
Sten
その通りだと思います。京都で特に気に入ったのは、まさにあなたが言うように、非常に人間味のある場所だということです。店主や店員と直接交流することができ、非常に「人間的」というべき経験でした。ひと1人1人の顔が見えるまちが、京都です。Jean Davidも私も、本当の人々と出会い、繋がれるという事実に大きく影響を受けました。特に、コーヒーのような複雑な歴史を持つ生の素材を扱う場合、多くのコーヒーショップを訪れ、人々と出会い、その過程を実際に見ることで、より人間的な体験になりました。
Towa
カメルーンでも、肩書きなしに人間として接してくれるような雰囲気がありますか?
Sten
もちろん。だからこそ、ここでの経験は非常にスムーズで、真摯なものとなったのだと思います。言葉の壁はありましたが、人々と簡単に繋がることができました。カメルーンの人々もとても温かく、歓迎してくれるので、故郷にいるような感覚でした。
YCノート | Towa
Jean DavidさんやStenさんと交流する中で、コミュニケーションをとるときに使う道具は言語だけではないんだな、というのを実感した。スピーキングが苦手な私はボディランゲージと表情を総動員して交流!言いたいことは、意外と伝わる!
滞在のベストモーメント! ー 五感で京都と出会った1ヶ月



Towa
滞在中に最も印象に残った経験を3つ教えてください。
Sten
たくさんありますね!3つ選ぶのは難しいですが、間違いなく大仙院の訪問です。座禅体験をし、茶道を体験し、そして禅庭を見ました。
それに、伏見稲荷大社です。山の上にある大きな寺院を訪れました。
あとは食べ物ですね。特に鯖寿司は本当に美味しかったです。鯖寿司は京都ならではのものだと聞きました。
そして、最高の経験として、ファイナルプレゼンテーションを挙げたいと思います。全てがうまくまとまり、終わるのを見たとき、本当に特別な気持ちになりました。京都の人々にカメルーンについて知識を伝えられたことをとても嬉しく思います。私たちの1ヶ月間の滞在を象徴するようなものでした。
YCノート | Hana
Stenさんはこのプロジェクトの後もお寺で行われる座禅会への参加を希望しており、実は調整をしていましたが、限られた時間の中では叶いませんでした。
Towa
滞在期間について、短すぎると感じましたか?
Sten
面白いことに、当初は1ヶ月は長いだろうと思っていました。しかし、終わってみると、全く十分ではなかったと感じます。1ヶ月でできることには限りがありますが、街や人々を知り、観察するには良い期間だと思います。特にカメルーンから来た者としては。最初は2週間の予定でしたが、それだと短すぎると感じました。1ヶ月以上だと、時に大変になることもあるかもしれません。ですから、1ヶ月という期間はちょうど良かったと思います。
Towa
クリエイターの中には、制作には1ヶ月では短すぎると言う人もいますが、どう思われますか?
Sten
それはクリエイターによると思います。私はキュレーターとして来ましたから、制作の必要はありませんでした。しかし、クリエイターにとっては1ヶ月は少し短いかもしれませんね。ただ、Jean Davidは、例えば、12枚の作品、12の顔を1ヶ月で制作しました。彼は多くの時間を制作に費やしました。
Towa
次回京都を訪れる計画はありますか?観光目的ですか、それとも今回のようなプロジェクトですか?
Sten
クリエイターたちと関わりたいと思っています。私はギャラリーのオーナーですから、京都とカメルーンのクリエイターたちの間に繋がりを作りたいです。そして、地元のギャラリーと協力して、私が扱うクリエイターたちの作品を展示したいと考えています。京都の地元クリエイターの作品でも、カメルーンのクリエイターの作品でもです。次の旅行がいつになるかは分かりませんが、近い将来に実現できたら嬉しいです。カメルーンと京都の間にいくつかの繋がりや橋を架けていけたらいいなと思います。
Towa
カメルーンと京都の若いクリエイターの留学のようなシステムを確立するということですね。
Sten
まさにそれが目標です。プロフェッショナルな面では、彼の作品を展示することに興味を持つギャラリーをここで探しています。彼は世界中の多くの場所、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカの多くの場所で展示をしてきましたが、アジア、日本での経験はこれが初めてです。ですから、私たちは今回のプログラムにおいてはオープンな姿勢で、個人的にも、プロフェッショナルな面でも繋がりを作り、さらに研究を深めていきたいと考えています。アフリカ、特にカメルーンの文化と、日本の文化、あるいは日本周辺の文化との間に、さらなる繋がりと類似点を探求し続けたいと思っています。
YCノート | Towa
カメルーンのクリエイターと日本のクリエイターの交換留学、面白そう!
都市ごとの特徴を考える ー 外からの目線で編み直す「京都観」

Towa
先ほど述べたように、私の出身は東京で。2つの都市で暮らしてわかったことですが、都市はそれぞれにその都市らしさ、都市の色を持っていますよね。あくまで2都市の話にはなりますが、東京と京都はそれぞれユニークな特徴を持っている気がするんです。
Sten
まったくその通りです。これらは日本の二つの重要な都市であり、私たちは東京で1、2日過ごしましたが、すでにその違いを感じることができました。東京はより典型的な大都市の雰囲気で、人々はペースが速く、皆自分の用事をこなしているという感じです。一方、京都は伝統と現代性が共存していますね。もちろん大阪など他の場所も違うのでしょうが、最初の経験が京都で本当に良かったと思っています。私自身の感覚により合っていました。
時にカルチャーショックとは言いませんが、人々の機能の仕方が興味深かったです。京都の人々は非常に穏やかで、保守的で、伝統主義者でもあります。しかし、私たちは彼らの別の側面も見ました。社交的で、とてもオープンマインドで、快適なゾーンから外に出ることを厭わない人々です。それが成長に繋がるのだと思います。この取り組みが続けば、都市とそのコミュニティは多くのことを学び、成長していくでしょう。
Towa
ある種の二面性に言及されましたが、京都のイメージは、滞在中に変わりましたか?
Sten
はい。いや、でもノーとも言えます。なぜなら、私たちは何の期待も抱かずにここに来たからです。何が起こるか全く分からず、大きな冒険でした。真理子さん(Bridge Studio)を個人的に知っていたので、彼女を信頼し、まっさらな状態で来ました。しかし滞在を通して、都市との繋がりは強くなりました。人々がどのように努力して、伝統を保存しながらも、グローバル化する未来に向けて自身を投影しようとしているのかを目の当たりにしました。梅小路地区では、多くの勤勉な人々、そして例えば水口さんのように、この都市の特定のあり方を守ろうと奮闘する人々を見ました。
シェアハウスの仲間やプロフェッショナルの方々まで、誰もがとても温かく、オープンマインドでした。本当に良い経験でしたね。
Masahiko (Support Staff)
京都とカメルーンのコミュニティの温かさ、という類似点が多くの出会いに満ちた滞在を可能にしたのでしょうか。一つ伺いたいのは、カメルーンの日常生活です。どのような点で京都と似ていて、違うのか。
Sten
ドゥアラは非常に都市的で大都市なので、時には東京に似た雰囲気を感じるかもしれません。誰もが忙しく、自分の日々を過ごしています。しかし、日常生活は非常にシンプルだと思います。街は大きすぎず、グリッド状に構成されているので京都に似ているかもしれません。街の一方の端から他方まで行くのにそれほど時間はかかりません。交通量によって時間は変わりますが。
私の一日も、オフィス仕事なので、午前8時から午後5時まで家族の会社、醸造所で働いています。キビールをご存知ですか?私の家族がビールを作っているんです。昨日もたくさんキビールを飲みました。
強いコミュニティ意識、強い家族意識があります。兄弟は皆そこにいて、定期的に会っています。できるときは街を離れて旅行に行きます。ビーチは車で1時間くらいのところにあります。もちろん、自転車は京都より少ないですね(笑)。
しかし、日々の生活はとてもリラックスしていると言えます。あまりプレッシャーはありません。美味しいレストラン、美味しい食べ物、そしてたくさんの文化があります。だから、ドゥアラにはやることがたくさんありますよ。写真を送りますね。私たちの日常生活を共有したいです。Jean Davidも新しいスタジオを開設したので、そこでたくさん制作するでしょう。
しかし、日常生活は、繋がり、集まり、コミュニティの瞬間、そしてまた、日々の喧騒、つまり仕事、交流、ビジネスに満ちていると言えるでしょう。ドゥアラは経済の中心地なので、多くのビジネスが行われています。ビジネスと日々のカジュアルな生活が混ざり合っていますね。この点は、梅小路にどこか似ているような気もします。
レジデンスオーナーとの関係性 クリエイター・オーナーが力を合わせて試行錯誤


Towa
最後に水口さんについて伺ってもいいですか?
Sten
彼は素晴らしい人物です。エネルギーに満ち溢れていて、これからこのプロジェクトに参加するすべての人におすすめしたい人々の代表です。彼がオーナーをするのはまだ二組目かそこらだと思いますが、全てを知っているわけではなくても、これは冒険だと理解して、信念を持って取り組んでいました。
繰り返しますが、私たちは友人になりました。個人的な会話もたくさんしましたし、アートや仕事とは関係なく、ただ人間として心を開き、とても親密な瞬間を共有できました。彼は素晴らしいです。とても機知に富んでおり、京都の多くの人を知っていて、その人脈をクリエイターに繋げてくれる、そんな人です。そして、純粋に好奇心旺盛です。彼は自分とゲストの間に一切の境界線を設けませんでした。彼はオープンマインドで、私たちと一緒に色々な場所へ連れて行ってくれました。
彼自身も私たちと一緒に新しい場所を発見しました。京都出身なのに、彼も行ったことのない川井寛次郎記念館にも行きました。彼も初めての体験だったので、訪問者である私たちと、京都の地元住民としての彼の経験を比較することができました。非常に人間的な交流でした。今では彼を友人だと呼べることを嬉しく思います。
Masahiko
彼はいつも「大丈夫、大丈夫」と言っていましたよね。
Sten
ええ。1日か2日経ったら、もうすっかり馴染んでいましたね。
改めて、この機会に感謝しています。本当に素晴らしかった。京都で関わってくれた人々の存在なしでは、私たちの京都での経験はこれほど素晴らしいものにはならなかったでしょう。カメルーン出身、あるいはアフリカ大陸出身の人々を招待してくれたことにも感謝しています。誰もがこれほどオープンでリラックスできるわけではないですが、私たちは水を得た魚のようでした。とても穏やかで、本当に素晴らしい滞在でした。
Towa
こちらこそ、貴重なお話ありがとうございました。
Interview with residence owner — Takayuki Minakuchi
「レジデンスオーナーがTakaでよかった」 ー レジデンスオーナーの関係を超えた友情

Towa
Stenさんにもインタビューをしたんですが、彼はレジデンスオーナーが水口さんで良かったと何度も言っていました。親友なんだ!みたいな話を、何度も。
水口 貴之さん(以下、水口さん)
確かに。未だにWhatsAppでやり取りしてる。
Towa
どんな内容のやりとりされてるんですか?
水口さん
I miss you、そればっかりですけど(笑)。
Towa
離れてからも関係性が続くというのはとても素敵ですね。
アート×不動産の新たなカタチ ー まずは、試しにレジデンスをやってみること

Towa
なぜ今回レジデンスオーナーをやってみようと決断されたんでしょうか。
水口さん
僕はアートホテルを一つ運営していることもあって、Artist in Residenceという仕組みは知っていました。 でも、どうやってやっていいかもわからないし、興味はあったけどできなくて。*** in Residence Kyotoの説明会に行って、***in Residence Kyoto事務局の杉田真理子さん(Bridge Studio)と知り合いだったこともあり、お話しをしたことからスタートしました。
Towa
もともとアートという文脈と水口さんには接点があったのですか?
水口さん
ホテルでのアート展示をしていました。そこで作家さんとはコミュニケーションを取るようになって、面白いなと思っていました。
その点もありますが、今回に関しては結構成り行きなんじゃないでしょうか。今回は、自分たちがレジデンスとしてやっていくかどうかを見極めるために参加しました。
施設を使っていく中の一つの選択肢としてクリエイターさんを受け入れるっていうのもありかな、とは思っていたんです。 でも自分でいきなり始めるのは無理だから、今回はこの事業に参加することで実施のきっかけにしました。
バランスを考える ー 滞在の枠組みをどのようにクリエイトする?

Towa
ここからレジデンス続けていくか悩んでいるというお話をしていただきました。どういった点で悩んでいるのでしょうか?
水口さん
継続してやっていくためには、バランスを取らなきゃいけない。例えば、まずはお金のバランス。 もちろん、バランスの取り方はお金だけかと言われるとそうでもない。モチベーションであったり、スケジュール感であったり、色々な側面でバランスを取らなければならない。
それが実際今後もできるかどうかっていうのを、今振り返って考えているという感じ。
Towa
なるほど。モチベーションのバランスという観点においては、Jean DavidさんとSten Kadjiさんの滞在を経てアップしたことはありますか?
水口さん
もちろん。海外の人とコミュニケーションするのは楽しいし、新しい発見もあるし、人生も豊かになるので素敵だと感じています。
先ほどの話に戻ると、Artist in Residenceって、色々なやり方があると思っています。そのレジデンスオーナーは場所提供するだけで「あとはお金全部持ってね」っていうところもあるし、今回みたいにある程度作品をサポートするっていう方法もある。
だから、金銭負担に関しても一概には言えないのかと思います。形式はこれといった決まりがなく、どれもArtist in Residenceっていう形なんで、どうやってうちの場合はやろうかな、みたいなのを考えていくっていう感じですね。
Towa
これから、Artist in Residenceの大きな枠組みの中で合う形を探していくフェーズなんですね。
水口さん
そう。 クリエイターにとってArtist in Residenceをやる理由って結構わかりやすい。 経験やキャリアになったり、知らない国で学んだことを自分の作品にインストールできたり。 そのためには自分でお金を払う人もいれば、国から補助をもらって来る人もいれば、レジデンス側からお金をもらってやる場合もある。 クリエイターは、そこでどうにかバランスを取っていくものなんだと思うんです。
一方で、レジデンスオーナーさんがそれをやる理由とそのバランスに関しては、わかりにくい。例えば僕のアートホテルに関しては、ホテルのPRになるから、こういうライフスタイルが幸せだから、 あとは儲かるから、 みたいな可視化しづらいバランスがあって、それを掛け合わせてみんなやってるんじゃないかなと思ってる。今回僕はそこの採算を一旦度外視でとことんサポートしようと思っていました。とことんサポートしたからこそ、これを続けていたら続けられないな、という実感を得ました。
Towa
少し前にStenさんにインタビューして、水口さんが本当に全面バックアップで何頼んでも大丈夫って言ってくれたのが、おかげで安心して滞在ができたと話をされてて。今の話を聞いていても相当なサポートだったんだなと感じました
水口さん
そこの匙加減というのはやってみないとわからないから、まず今回に限ってはとことんやろうと思って決めてやりました。
滞在と地域がつながる ー 梅小路エリアとクリエイターの密接な関係

Towa
Jean DavidさんとStenさんが滞在したことで、この地域にその影響を与えたとか、具体的なエピソードをお聞きしたいです。 あとは水口さんに起こった変化があればお聞きしたいです。
水口さん
数年前にここのエリアに事務所を構えました。このエリアはどこかカジュアルで、それが僕は好きで。この場所の雰囲気が好きな人がどんどん集まってきています。
この地域の人たちは周りの人にも寛容で、全然ネガティブな反応はなかったです。JeanとStenの二人が最後のプレゼンテーションで言っていたのですが、「よそ者感」を感じなかったと言ってくれたのが嬉しいことでした。
Masahiko
最後お火焚き祭りの帰りに、前日大変だったから先に帰ると言われて別行動を取ったんです。その後見かけたら道端でも町の人にもみくちゃにされて「寂しい!」に言われていて。10人ぐらいで写真を撮っていました。
水口さん
この地域の人はみんなあんまり英語喋れないけど、一貫してウェルカムの姿勢ではありましたね。
Masahiko
僕はそれを見てちょっと泣きそうになりましたね。
水口さん
このエリアをさらに面白くしたいという方向性を実現する上で海外クリエイターを呼んでみる、ということは良いチャンスだったと感じます。
Towa
StenさんとJeanさんを、梅小路の地区に、地域に溶け込ませる役割を水口さんが結構担われていたと感じています。まずどこに紹介しようと事前に決めていたんですか? 成り行きなのでしょうか?
水口さん
僕の仲良い人に紹介をしました。
Towa
あ、なるほど。だから外国人とか日本人とか関係なしに、知り合いが来たら自然に紹介するようなイメージですね。そうしたらもう関係性が勝手にできてった感じでしょうか。
水口さん
水口さんのところで滞在していると知ったら、皆JeanとStenと仲良くなってくれました。銭湯も一番最初は僕も一緒に行ったのですが、その後は彼らが各々で行っていましたね。
梅小路をおもしろく! ー パズルが重なるように生まれた滞在

Towa
梅小路を面白くするという軸に、外国人を呼んだらもっと面白くなるみたいなお話されていました。なぜそのように考えるようになったのか、どういった形で面白くなりそうだなと感じたのかお聞きしたいです。
水口さん
そもそも僕は保守的な人間ではないんです。海外旅行も好きなのですが、いろんな人やカルチャーと触れ合うのが楽しいと思っています。
京都ってどっちかというと保守的なエリアが多いと感じています。もう少し肩の力を抜いていられるところにいたいので、このエリアをまず選びました。
実際に来てみたら本当にそういう場所で。市場の方たちも誰が来ても全然ウェルカムです。この面白さをどんどん広げていこうと思ったら、面白い人が集まってきました。そこに海外の人も入れたらもっと面白いなって思ったんです。 でも旅行で来てる人たちとかとはそこまで濃いつながりは生まれない。せっかくなら長く滞在してもらう方が面白いなと思って。
Towa
水口さんは今までどんな国に行かれたんですか?
水口さん
かなり多いですね。 今年は近くに住む友人と一緒にアフリカに行きました。
Towa
それもあってアフリカ出身のクリエイターを受け入れた感じでしょうか?
水口さん
それも加味して、杉田真理子さん(***in Residence Kyoto 事務局メンバー)が調整をしてくれました。
Towa
水口さんのお話聞いてて、色々なパズルが噛み合ってJean DavidとStenの滞在があったんだなと思いました。

水口さん
フランスに住んでる知り合いの日本人、アートに詳しい人がいて、今度Artist in Residenceをやるんですって話をしたんです。
そこで京都市の事業だと言うと、驚かれました。 Artist in Residenceってやっぱり野良のもので、 勝手に始まって勝手に終わっていくものだと向こうは認識している。
行政がバックアップするんだっていうのはなかなか見ない例で、もともとのスタートと全然違うんですよね。 本来はナチュラルなものだけど、今結構、行政としては空家対策も含めて、あとは文化的京都を救うためにもやりましょうみたいになってる。あとは、、日本にはそんな文化がないから、こういうシステムがないと最初の一歩を踏み出せる人はなかなかいないから、そういう意味でも最初はこういった事業が必要だと感じます。
Towa
今はその仕組みを作っている段階なのでしょうか。
水口さん
欧米社会ってすごいオープンで、家に人が泊まりに来るとか、パーティーするとかが多い。 日本はそうじゃないから、やっぱり受け入れるという文化が少ない。
Towa
難しい。日本の文化に、それこそArtist in Residenceを持ち込むっていうのと、そこをしかもマネタイズするとなるとさらに難しくなる。そのラフさを文化にするのが難しいところですよね。
水口さん
そういうラフな距離、間合いの取り方はやっぱやってみないとわからなかったです。ただ、もう分かりました。それがわかるだけでも一回やった意味があると思っています。
Towa
ラフとはいってもオーナーとクリエイターの交流がなければ二者のシナジーみたいなものは起こらないですもんね。
水口
いろんな形が生まれればいいですね。だからシェアハウスの 1個にそういう人を入れるっていうのはありかなと考えています。 例えばアパートを全部シェアハウスにして、その1室を開けておく、みたいな。
クリエイター・オーナー それぞれの葛藤 ー滞在における取捨選択の難しさ

水口さん
僕は不動産と建築をやってるからそういうので新しく模索できるかなと思ったりして、今色々物件探したりしています。 全部海外の人のためのシェアハウス作ったらいいんじゃないかな、とか。
Masahiko
梅小路でやれたら楽しそう。
水口さん
ここでできたら一番嬉しいとは思います。
Towa
Stenが言ってたのは、やっぱり梅小路が観光地じゃないところが良かったということでした。 Jeanは創作に集中できただろうし。
水口さん
この辺りは物件に滞在するというよりはエリアに滞在するイメージが近いというか。特段エリアっぽかったんですよね。
Towa
その点、結構特色ですよね。
水口さん
まあそうしたかったし。それでよかったなと思います。
Towa
彼らが滞在したシェアハウスの中でも関係性が生まれてるように見えました。シェアハウスに伺った時に、そこに住んでいるメンバーが、StenとJeanとおでんパーティーをすると聞きました。シェアハウスでも関係性が育っていて、とっても素敵だなって思っていました。
滞在のBest Moment! ー対話し、理解する 関係性とバックグラウンド

Towa
皆さんに最後聞いているのは滞在のBest Moment トップ3です。
水口さん
銭湯行ったこと。 銭湯は良かった。 銭湯はもう彼らの中の一番って言ってましたね。 この旅のハイライトだって。 言ってましたね。
あとは何だろう。 今回僕のケースは結構特殊ですよね。 キュレーターと作家が両方来ていた。 その関係性が分かりやすかったのはなんらか影響しているかも。だから、二人の関係性に触れたことかもしれない。
例えばJeanはやっぱりインスピレーションを受けてゾーンに入る時があるんですよ。Stenはそういうときに仲介者として、Jeanを尊重しながら僕らと喋るのを感じた。
3つ目はやっぱり現地の国のことを色々聞いたこと。 カメルーンってやっぱり貧しい国で政治も膠着してるし、風通しも良くないけど、なんでそこで創作をやってるのかみたいな話は聞きましたね。Davidは現地でアート教育をするために建物を建てている話だとか、植民地の歴史の話とか、飲みながら喋ったのが良かったかな。 やっぱり会話をして、いろいろこうカルチャーを聞いてた時ですね。
Towa
水口さんが伴走をめちゃくちゃ丁寧にやって、ずっと一緒にいたからこそ生まれた関係性っていうのは大きいですよね。
水口さん
一緒にいる時間が長かったし。そう、清水寺に行ったりとか、何処かに一緒に行って喋って。河井寛次郎の博物館にも行ったし。連れて行くところも、どういうのが興味ありそうかっていうのが分かって、それにマッチしたところを連れていったら喜んでもらえました。
滞在サポートのこれから ー折り合いをつけつつ、関係性を作り続けること

水口さん
僕らがレジデンスとして受け入れをしているかを確認する問い合わせのメールが一個届いています。 韓国に住んでるアメリカ人で、受け入れるか迷ってるんですけど、その条件面とか今整理をしようかなと思って。
難しいのがオーナーとクリエイターの距離感だと思っています。 ここが難しくて、ケアすればするほど相手の満足度は絶対高まるじゃないですか。だから喜んでもらうことは簡単なんです。 ただ、そうすると自分の中でのバランスは崩れかねない。そのバランスを考える上でも、まだArtist in Residenceをしたことのない人がチャレンジできるというのがこの***in Residence Kyotoの事業としての大事なポイントだと思うんです。

滞在を終えたクリエイター・レジデンスオーナーが語った満足感と、未来への展望。話を聞き、改めて文字に起こすことで見えてきたのはasterisk in residenceに求められるやわらかな制度設計と、それを許容することができる京都の土壌の深さでした。
レジデンス事業を通じて生まれる文化の交差の痕跡は、クリエイターが去ったあとも地域に残り、そしてだんだんと地域に溶け込んでいくのです。