「無常」と「出会い」の包摂:失われていくものに思いを馳せ、新たに出会うものに心を寄せる
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「*** in Residence Kyoto」は、海外からやってくるクリエイターと、京都の生活者が日常を共有して学び合い、新しい価値観や関係を育てていくレジデンスプログラムです。
今回密着したのは、左京区 くろ谷 金戒光明寺の住職でありレジデンスオーナーである伊藤 英亮さんと、このレジデンスに滞在・制作を行ったミャンマー出身の医師でありクリエイターのZun Ei Phyuさん。
自然に囲まれた寺院は、850年の歴史をこの地域とともに歩んできたコミュニティの憩いの場でもありました。Zun Ei Phyuの、滞在制作を経たアウトプットのテーマは「無常」。それは永遠の不存在を確かに唱える言葉でありながら、今ここに生きる我々を優しく受け止め、肯定する言葉でもありました。
- 聴き手・記事執筆 ユースコーディネーター
- 聴き手 サポート
本文中には、執筆担当以外の Youth Coordinator たちによるコメント[🌀YCノート🌀]をところどころに挟み込んでいます。ページを進めるたび、別の目線からの気づきや驚きがそっと挟み込まれるような、多層的な読み心地を感じてもらえると嬉しいです。
目次
CreatorResidenceInterview with Residence Owner地域とつながる糸口を探す
ー「ノブレス・オブリージュ」と地域との連帯信仰と、地域と、ミャンマーと
ーつながる魅力、広がるコミュニティクリエイターの視点で編む仏教感
ー 準備段階から滞在をクリエイトする滞在を契機とした変化
ーこれからも息づく滞在の痕跡滞在中のベストモーメント
ーひろがる、レジデンスの可能性Interview with Creatorクリエイターのバックグラウンドを包摂する”asterisk” ー滞在を通じ、拾い集める*(asterisk)のかけら地域とのつながりから生み出す、地域とのつながりを生み出す
ー受け入れることで生じるやわらかな変化「無常」を表現する
ー「誰も拒まない」開かれた展示滞在のベストモーメント
ーだいじに命を使うこと、今この瞬間に思いを馳せること
Interview with Residence Owner
地域とつながる糸口を探す ー「ノブレス・オブリージュ」と地域との連帯

ユースコーディネーター新田 冬和 (以下、Towa)
なぜここでレジデンスをやろうと決めたのか、レジデンスオーナーをされようと思ったのかのきっかけをお聞きしたいです。
伊藤 英亮さん(以下、英亮さん)
きっかけは、京都市役所の野口さんから***in Residence Kyotoについてお話を伺ったことでした。当初はここで実施するというよりも、「どこか良い施設はありませんか?」という相談から始まったと記憶しています。
お話を聞きながら、「もし仮に金戒光明寺でやるならば、宿泊はここ、制作ならあそこの施設が使えるかな……」と具体的にシミュレーションしてお伝えしたんです。その後、事務局の皆さんに実際に現地を見ていただいた上で、「ぜひここで」と正式にご依頼をいただきました。
私個人としても、寺に隣接している旧小杉邸が空き家のままになっているのをずっと心苦しく思っていたので、活用していただけるならと、寺の内部調整にも奔走しました。関係者の皆さんの熱意が、私自身の背中を強く押してくれたと感じています。
YCノート | Towa
実は、別のクリエイターのPaul Bonnevilleのレジデンス期間中に小杉邸に一回伺ったことがあります!
ここに住みたい!とPaulが言っていたのが印象に残っています💭


Towa
そのようなやりとりがあったんですね!お寺は地元に根付いていて、地域ととても密に繋がっている施設だと思うので、お寺で海外クリエイターを受け入れることの影響はたくさんありそうですね。
英亮さん
実は当山(くろ谷 金戒光明寺)として、これまで地域の方々と深く連携する機会はそれほど多くありませんでした。理由は定かではありませんが、歴史ある大本山ゆえに、どこか『ここにいて当然』という高圧的な空気感というか、地域に対して閉鎖的な印象を与えてしまっていたのではないか、という危惧があったんです。
そんな現状を変えたくて、4年ほど前から子ども食堂を始めました。まずは地域のために施設を開くことから一歩ずつ。そうした社会貢献の積み重ねがあったからこそ、今回のレジデンスのお話も、自然な流れで参加を決めることができました。せっかく活用できる施設があるのなら、協力できることはどんどんやっていきたい。私個人としても、まさに願ったり叶ったりのプロジェクトでした。
Towa
これほど大きなお寺でありながら、これまでは地域との繋がりがどこか薄いと感じておられた。だからこそ、その関係を深めていきたいと考えていた矢先の、一つのきっかけだったということですね。やはり、京都市の事業であるという安心感は大きかったのでしょうか?
英亮さん
もし面識のないクリエイターの方が急に来られて「ここでやらせてほしい」と仰ったとして、それを受け入れられたかどうかは……正直分かりません。そこはやはり慎重になります。
けれど今回は、京都市の方々が間に入ってくださっていた。その存在は大きな安心感に繋がりましたし、お寺の内部を説得する上でも、間違いなく強い後押しになりましたね。
聴き手サポート 榎 藍香(以下、Aika)
英亮さんが「お寺をもっと地域に開いていかなければ」と思われた背景を、もう少し詳しく伺いたいです。それはお寺全体でずっと構想されていたことだったのか、それとも英亮さんご自身が強く感じておられたことだったのでしょうか?
英亮さん
実は今、僕は滋賀に住んでいるんですけど、滋賀ってこども食堂がすごく盛んなんですよ。日常的にフードバンクやこども食堂の活動が目に入ってくる環境にいて。それで「うちのお寺のキャパシティなら、こども食堂ならできるんじゃないか」と考えたんです。まずは月に一回からでもやってみよう、と声をかけました。
あとは、「ノブレス・オブリージュ」という言葉がありますよね。高い地位にある者は、その力を社会のために使う義務がある、という考え方です。総本山としてこの地域に長くいさせていただいているのに、地域のために何もできていないのはどうなんだろう、という思いもありました。今回のレジデンスも、そうした活動の延長線上で「ちょうどいいきっかけになるんじゃないか」と考えたのが始まりですね。
信仰と、地域と、ミャンマーと ーつながる魅力、広がるコミュニティ

Towa
次の質問です。こちらのレジデンスならではの特色や魅力はどんなところにあると思われますか?
英亮さん
やはり、他にはない歴史ある建物そのものでしょうね。「仏教」という明確なカテゴリーがある分、表現に制約もあったかもしれませんが、お寺という空間そのものに力があったのではないかなと思います。
Towa
今回滞在されたZunさんは仏教徒ですし、彼女の出身国であるミャンマーも仏教国ですよね。
Aika
特徴として、左京区エリア全体が協力的だったのも印象的でした。消防の夜回りや区民祭など、左京区役所の方々も「楽しみにしています」と声をかけてくださったり。「くろ谷さんに滞在されている」という、地域からの信頼や期待を感じました。
YCノート | Towa
左京区にある大学の友達を呼んだり、住民の方と交流したり、レジデンス施設のうちと外の境界がものすごく緩やかで、入り込む隙間がたくさんあったと感じました。
Towa
地域とのつながりが少し薄いというお話を、先ほどされていたのですが、空き屋のお掃除をしている時にご近所に住まれているおばさまが話しかけてくれたことが、 個人的に印象的でした。


英亮さん
僕は基本的に小杉邸から少し離れたところにいたからなあ…… 知らないうちに交流が生まれていたんですね(笑)。
Towa
そうなんです!ワークショップの時には自転車に乗ったおばさまが「草刈り機いつでも貸すからね!」と言いに来てくれたり。道に面した旧小杉邸の佇まいや、このお寺だからこそ、自然な縁を呼んでいるのかなと、Final Presentationを見ていても感じました。
クリエイターの視点で編む仏教感 ー 準備段階から滞在をクリエイトする

Aika
滞在の前半に、Zunさんが「お寺について知りたい」と、英亮さんとZunさんとで対話の場をつくられましたよね。やり取りで印象的だったことはありますか?
英亮さん
今日のFinal Presentationで行われた「供養」の展示は、まさにあの時の話がきっかけだったと思います。「お供え物にはどんなルールがあるんですか?」と聞かれたので、「十種供養」という基本形はあるけれど、供えるものを全てを揃えると大変なので、何より大事なのは「供養する気持ち」なんだよ、と伝えました。花を一輪摘んでくるだけでも供養になるんだ、と。
そしたら彼女、近所のお庭に咲いている花やボールなど、そこにあるものを拾い集めて会場にお供えしていたんです。僕らお寺の人間では、絶対に出てこない発想でしたね。
Towa
英亮さんが以前「仰々しいことよりも、気持ちがそこにあることが大事」と仰っていて、素敵だなと思っていました。ミャンマーの日常に溶け込んでいる仏教観と、英亮さんの考え方が響き合った結果があの展示だったんですね。
英亮さん
そうかもしれません。日本人も、困った時にはお寺や神社に行きますよね。Zunさん個人の信仰心と、「日本の仏様をお祀りしたい」という純粋な気持ちが、あの対話を通じて形になったのだと感じました。
滞在を契機とした変化 ーこれからも息づく滞在の痕跡

Towa
次の質問です。Zunさんが滞在したことで、このレジデンス施設に起こった変化がありましたらお聞きしたいです。
英亮さん
まず、旧小杉邸に「人が入れるようになった」ことですね(笑)。
初日の状態を覚えてますか? 全くの手つかずで、靴を履いて上がらないと危険なくらい。 それが今や、あそこで腰を下ろして瞑想までできる空間になった。庭も見渡せるし、蔵の方まで歩いていける。この変貌ぶりには、本当に驚きました。



Towa
Final Presentationに来られた大学生が「ここに住みたい!」と言っていたのが印象的でした。Zunさんの滞在中に皆で取り組んだ手入れのおかげで、この場所が本来持っていた可能性が引き出されたと感じています。今後、旧小杉邸をどのように活用していく予定ですか?
英亮さん
お寺として何かを決めるというよりは、「ここを使いたい」という方がいれば、どんどん活用していただきたいなと思っています。
Towa
今回の受け入れを通じて何か感じたことはありましたか?
英亮さん
「もっと英語ができればよかった」と痛感しましたね。直接深いコミュニケーションが取れなかったのは、彼女にとっても申し訳なかったなと。日本語でばかり話してしまったのが心残りです。それでも、今後もこうした受け入れを続けていきたいという気持ちです。
滞在中のベストモーメント ーひろがる、レジデンスの可能性
Towa
今回の滞在で特に心が動いた「ベストモーメント」を教えてください。
英亮さん
一つ目は、やはり初日ですね。彼女を迎えて、一緒にお庭を案内した日のことはよく覚えています。


二つ目は、皆で空き屋になっていた旧小杉邸を掃除した日。参加型のワークショップなどを通じて、場所がどんどん開拓されていったのは大きな出来事でした。


そして三つ目は、ZunさんのFinal Presentationの日です。



Towa
Final Presentationの空気感は本当に良かったですね。最後にはミャンマーのティーサラダを振る舞ってもらったり、ユースコーディネーターの中村心音さんが用意してくれたお茶を囲んで、自然と会話が弾んで……。色々な文化を吸収して、混ざり合うというより、境界線そのものがなくなっていくような「ボーダレス」な光景でした。
英亮さん
僕たちだけでは絶対に出会えなかったような方々が、たくさん足を運んでくれたのが嬉しかったです。 普段、私たちはお檀家さんに向けて法話をしたり、布教活動をしたりします。それももちろん大切なことですが、一方で、仏教のことを全く知らない方や、これまで縁のなかった方々にも知ってもらうことで、理解の輪はさらに広がっていきます。
「すでに知っている人に伝え続けること」と「新しく知ってもらうこと」。その両輪が必要なんだと改めて感じました。今回のレジデンスは、まさにそのきっかけになったと思います。
Towa
海外からの視点が加わったことで、お寺が外に向かって開かれたのですね。
Interview with Creator
クリエイターのバックグラウンドを包摂する”asterisk” ー滞在を通じ、拾い集める*(asterisk)のかけら

Towa
最初の質問です。なぜ京都、そしてこの「*** in Residence Kyoto」に参加しようと思われたのですか?
Zun Ei Phyu (以下、Zun)
アートキュレーターのハルカ(居原田さん)から連絡をもらったのがきっかけです。惹かれたポイントは二つありました。一つは「お寺」がホストであること。もう一つは、これが単なる「アーティスト・イン・レジデンス」ではなく、「asterisk(アスタリスク)」の名を冠していたことです。
通常のレジデンスは対象がアーティストに限定されがちですが、ここは誰もが「主役(asterisk)」になれる。大工さんでもシェフでもいい。異なる専門家を繋いで対話や共創の場を作るという目的に、強く惹かれました。
Towa
Zunさんはアーティスト活動に加え、医療にも携わっている多様なバックグラウンドもお持ちですよね。だからこそ、多角的な視点を持つそのスタイルは、このプログラムにぴったりだと感じました。
Zun
私もそう感じています。私の作品は「プロセス」そのものなので、アウトプットを作ることよりもプロセスを重視するこのレジデンスのあり方はしっくりきました。
地域とのつながりから生み出す、地域とのつながりを生み出す ー受け入れることで生じるやわらかな変化

Towa
旧小杉邸での展示は、地域の人々や文化と深く繋がっていましたね。最初からあのような形をイメージしていたのですか?
Zun
実は、来る前と考えていたことは全く違うんです! ハルカさんが送ってくれた写真は、家の修理前の、森の中のような場所に見えました。「瞑想でもして森を楽しめる場所かな」なんて思っていたんです。
でも到着してみると、家は街中にあった。そして何より、この旧小杉邸のありのままの姿が素晴らしかった。
当初は、日本だから「折り紙」のワークショップをして、インスタレーションを作って、データ収集してQRコードを貼って……といった計画を立てていました。でも、実際にその空間に立ち、人々と話し、「観光客はお寺に行くけれど、地元の人は意外とそうではない」と話されていたり、お寺と地域の関係を知るうちに、考えが変わりました。
押し付けではない、有機的な繋がりをどう作るか。ミャンマーの要素も入れたいけれど、単に異物を持ち込むのではなく、ここのお寺、ここの人々、ここの考え方との関係性を見つけたかった。大工の方が古い家を直す姿を見たり、家の構造や「蔵」をリサーチしたりしながら、一歩ずつ今の形になっていったんです。



Towa
実際に京都に来てからプランを変えたのですね。旧小杉邸のどのあたりが気に入ったのですか?
Zun
構造そのものです。それぞれの部屋に目的がある感じ。特に、Final Presentationも行った部屋から見えるガラス窓や障子、廊下、庭……。あの景色は完璧でした。「蔵」も素晴らしい。
Towa
草刈りワークショップをした時に、通りがかりの地元の人が「何してるの?」と参加して楽しんでくれました。この滞在で、地域と繋がっている実感はありましたか?
Zun
はい、強く感じました。
滞在中、学区の市民祭や地域のちいさなクリスマス会、消防(火の用心)の見回りなど、小さなイベントがたくさんありました。私は日本語が話せないので直接的な会話は難しいですが、地元の人が何を大切にしているかを肌で感じました。
本で読むのと、実際にそこで経験するのは全く違います。私は、ただの観光客として旅行するのではなく、アートインレジデンスを通じて、地元の人の視点やアドバイスをもらいながら滞在するのが最高の体験だと思っています。


YCノート | Kazuki
この後一緒に二人でご飯に行った。ミャンマーの政治的状況と美術業界の関連について話を聞いた。いかに日本が何も考えずに生きられてしまうような社会なのかを身に染みて感じた。作品の内容と政治的状況は密接に関連している、日本人における表現は何かなど、色々話し合えて勉強になった。

ユースコーディネーター 中村 心音 (以下、Cocone)
Final Presentationの準備中、近所の女性が庭を見に来てくれましたよね。彼女はこの古い家をずっと気にかけていて、Zunさんが草を刈って綺麗にしているのを喜んでいました。
Towa
Zunさんが来たことで、くろ谷 金戒光明寺と地域の繋がりが以前より強くなったのかもしれませんね。京都やくろ谷での滞在を経て、Zunさん自身の考え方や制作スタイルに変化はありましたか?
Zun
劇的な変化というよりは、くろ谷 金戒光明寺のまわりで暮らす人々やお寺に対する理解が深まりました。そして、「紙(和紙)」への興味がより強くなりました。単なる素材としての紙ではなく、それを作る人々やプロセスを含めた、紙を通じた対話の可能性について、もっとリサーチして繋げていきたいと思うようになりました。

Towa
展示されていた「障子」の作品には驚きました。あのようなアイデアはどこから来たのですか?
Zun
空き家を修理してくださった大工のシマコウさんと作業していた日に、家の中に差し込む光と影を見て「これだ」と思ったんです。もともと影を使った作品を作っていたのですが、ここの光の入り方は特別でした。
そこでお寺や仏教の知識をリサーチする中で、「無常(Impermanence)」というコンセプトに行き着きました。すべては変わりゆくということを、どう見せるか。
そこで「線香」を使うことを思いつきました。線香は祈りの道具であり、それで障子に穴を開けるプロセスは「無常」の象徴になります。押し当てる圧力や火の強さ、その時の集中力によって、穴の形や焦げ跡は変わります。
普通の絵画とは違う、その瞬間だけの美しさがある。光がその穴を通り抜けて砂のように室内に落ちる時、自然と家が一体化するんです。
Towa
大工のシマコウさんの哲学も、Zunさんの障子への洞察に影響を与えたのですね。


「無常」を表現する ー「誰も拒まない」開かれた展示

Towa
ミャンマーの仏教と日本(浄土宗)の仏教は少し違いますよね。その違いや、お寺に滞在したことは作品に影響しましたか?
Zun
私は宗教を比較しようとは思いません。どの宗教も「より良い人間になろう」という意図は共通していますから。違いに固執すると対立が生まれます。
私はただ、ここでの実践や、お寺とコミュニティの関係を理解したかったんです。作品については「仏教」を前面に出すのではなく、どの仏教にも共通するコアな概念である「無常」を取り入れました。
Towa
ここは今年度行われた、全6つのレジデンスプログラムの中で、唯一の宗教施設でした。これは最終的なアウトプットに影響はありましたか?
Zun
「お寺の入り口にある古い家」という場所を活かし、お寺と人を繋ぐ要素は入れましたが、特定の宗教を宣伝したかったわけではありません。
キリスト教徒でもイスラム教徒でも、誰にでも開かれた場所にしたいと思っていました。
住職である英亮さんが仏式で儀式を行って空間を開いてくれましたが、それは「お寺が所有する場所だからこそ、皆を招き入れる」という文脈で捉えています。
Aika
英亮さんはインタビューで、「普段お寺に来ないような多様な人々、仏教に興味がなかった人々までがたくさんプレゼンに来てくれて本当に嬉しかった」と仰っていましたよ。
Zun
それを聞けて本当に嬉しいです。
滞在のベストモーメント ーだいじに命を使うこと、今この瞬間に思いを馳せること

Towa
最後に、滞在中のベスト・モーメントのトップ3を教えてください。
Zun
難しい……たくさんありすぎて!
1つ目は、到着した日の夜、みんなで一緒に食事をしたことです。寒かったけれど、出会ったばかりのみんなと囲んだ食卓は本当に温かかった。
2つ目は、Final Presentation。この1ヶ月で出会った人々が、入れ替わり立ち替わり顔を出してくれました。







3つ目は、特定の瞬間というより、皆さんと過ごした小さな対話の時間すべてです。ワークショップの合間に議論したり、考えを共有したり。その積み重ねが最高の思い出です。



Cocone
滞在の前半で開催されたオリエンテーションの時、Zunさんはユースコーディネーターの私に「一緒に何かやりたい」と誘ってくれましたよね。なぜ私だったのですか?
Zun
Coconeさんが伝統工芸に興味があると言っていたからです。一緒に時間を過ごし、興味を共有して働けたら素晴らしいだろうなと思いました。試験期間中だったのに、プレッシャーを与えてしまっていたらごめんなさい(笑)。
Cocone
いえ、誘っていただけて本当に嬉しかったです!
Zun
人は「自分はまだ死なない」と思っているうちは、本当に価値のあることを忘れがちです。試験が近づかないと勉強に身が入らないのと似ていますね(笑)。でも、死に直面した時、初めて「何を優先すべきか」を考え始めます。
だからこそ、私は今、この古い家で皆さんと過ごしているこの瞬間、この1ヶ月がどれほど「特別」で「貴重」なものであるかを深く感じ、味わおうとしています。
Towa
「ミャンマーの学生の話を聞いて、未来の計画を立てられることがどれほど幸せなことか気づいた」と言っていたユースコーディネーターのメンバーもいました。
Zun
置かれた環境によって思考のプロセスは変わります。10年前の私ならもっと先のことを考えていたでしょう。でも今の私は、ただ今この瞬間を楽しもうとしている。
そして、今ここ、この古い家にいて、あなたたちと一緒に良い時間を過ごしています。それは長くは続かないかもしれませんが、それでも、すでにとても、とても特別で、とても価値のあることです。
この瞬間を楽しむことを、まずは何よりも大切にしたい。人生は、思ったよりも短いですから。

インタビューを通じて得られたのは、ありのままを受け入れ、柔軟に変わっていく偶発性に身を任せるレジデンスの可能性でした。
移ろうものを受け入れ、失われゆくものから新しい出会いを探す
―京都という悠久の歴史が前提としていた観念を想起させるような体験が、繰り返し訪れました。
永遠は存在しない、しかし、そんな中でも今ここに生きる存在である自分だけは確かです。
そして、そんな確かな存在を優しく受け止めうるのが、*:asterisk という企画の概念なのかもしれないと感じました。
- 執筆:ユースコーディネーター 新田冬和
- 聴き手:ユースコーディネーター 中村心音、***in Residence Kyoto 事務局 榎 藍香